現実逃避

なりたい自分と求められる自分の狭間

イエベ春だと思っていたのに

2月14日、バレンタインデー。

私は高校2年生を最後にバレンタインデーからは引退した。チョコレートを配るのは性に合っていなかった。あげたいような人もなし。

 

なんとなくカップルが多くて騒がしい、繋がれた手に阻まれて前に進めない日に、私はアルバイト先の同期とパーソナル診断を受けに行ってきた。

予約したサロンは日本橋にあった。事前にもらったメールでは化粧をせずに来ることを勧めていたが、さすがに肌荒れの跡が目立つ顔では歩けないと思い、化粧をして行った。

 

サロンに着いてまずアンケートに回答した。好きな色調のシーズンやよく着る服の色、苦手だと感じる色などを答えた。

ここで答えた好きなシーズンが自分のパーソナルカラーの予想だと思われたことが気になったが、世の中そんなものだと思って気にしないことにした。

 

まず同期が診断を受けた。彼女は「きっとイエベ秋って言われる…。」と言っていたが私にはブルべ夏に見えていた。実際にもブルべ夏だった。

彼女に黄みがかった色のドレープがあてられる度に顔がくすんで見え、青みがかった色のドレープがあてられる度に晴れるのをみるのはとても興味深かった。

 

次は私だった。白いケープと三角頭巾をつけて、眉を隠し、化粧を落とした。

ファンデーションより肌が白いと言われたが、普段化粧をしていてファンデーションの方が明るいと思っていたので意外だった。

 

初めに緑のドレープをあてた。ドレープは春夏秋冬の順に重なっていた。私は自分のパーソナルカラーがイエベ春だと思っていたので、レタスのような緑をあてがわれても何の違和感もなかった。

しかし、診断をしてくれたおばさまは「色が強すぎて顔が負けている」と言う。できるだけニュートラルな視点で見ようとしたが、何せ一枚目の色だったから分からない。他の季節の緑もあまりしっくりこなかった。

 

専門家が言うのだから間違いないと自分の頓珍漢な色彩感覚に無視を決め込んで、他のドレープをあててもらう。

「赤色がお似合いよ」と言われながらもどの赤にも顔が負けているのではないかと思っていたが、ついに自分にも色の違いを理解できる時が来た。

 

ピンクと水色のドレープをあてられた時だった。

春のコーラルピンクは好きだがおばさまはノーコメント、夏の青みがかったピンクと冬のショッキングピンクが似合うので私はブルべだという。ショッキングピンクは顔が負けている気がしてならなかったが、夏のピンクは肌荒れの赤みに近い色をしているのを確認した。

そしてブルべの中でも夏と冬のどちらなのかを見るために水色をあてた時、夏の水色は顔が一気に薄く見え、おばさまが「夏の水色は顔がぼやけるわね」とコメントした。そして冬の鮮やかな青に切り替わった瞬間、顔のぼやけがなくなり、顔立ちが明瞭になった。

これを見ておばさまは私のパーソナルカラーはブルべ冬だと言った。セカンドは夏らしい。

 私は混乱していた。肌が間違いなく普通の人と比べても黄みがかっていて、イエベだと確信していたのにファースト冬でセカンド夏だなんてブルべど真ん中だとは思いもしなかった。

 

一緒に受けた同期は私と違って稼いだお金をきちんと使うことのできる人なのでデパコスを帰りに買っていくと言う。私は化粧品にお金をかける勇気が出ない人間なので便乗することにした。

BAさんにタッチアップしてもらったときにも明らかにイエベっぽい色のリップを勧められたのでイエベに見えるのだろう。これも手伝っていまだに自分のパーソナルカラーを確信できていない。

確かにイエベなら似合うはずのキャメルが安っぽく見えたり、ゴールドではなくピンクゴールドのピアスを選んだり、ブラウンのアイシャドウを買う際にピンクブラウンを買ったりなど、黄みの強すぎる色が苦手なことは無意識に理解していたようだ。

 

診断を受けてしばらくしてから戸惑いを妹に打ち明けると、「使える色の幅が広いってことでしょ、気にしなければいい。」と言い放たれた。

確かにこれまでイエベ春向きの色をたくさん使ってきたが、実際に似合うのはブルべ冬と夏の色だ。つまり、以前から似合わない色があると自覚しているイエベ秋の色以外は使える可能性が高いということだ。

 

それに、パーソナルカラーについて調べてみると、パーソナルカラーが生きるのはもっと年を重ねて肌がくすんできたような時だという。

若いうちはあまり気にせず使いたい色を身に付けようと思う。また、これまで似合わないだろうと思って敬遠してきたボルドーバーガンディーのような深い色にも挑戦してみようと思ういいきっかけになった。

得意な色と苦手な色を知るのも悪くないし、ぜひ機会があれば受けるべきだと思う。